むくみ(浮腫)とは
むくみとは、体内の組織に体液が溜まる症状です。体の中でも水分がたまりやすい足や、小さな変化でも目立ちやすい顔は、むくみが発覚しやすい部位です。
急激な体重増加も、むくみがひどい状態の症状です。むくみの程度が強い場合や急にむくみが出現した場合は、何らかの病気の症状として起こっている可能性が疑われます。
危険なむくみ(浮腫)のサイン
これらの症状があれば一度当院に受診することをお勧めします。
むくみを起こす病気
心不全
心臓は全身に血液を送るポンプの役割を果たしていますが、心不全になるとその機能が低下し、血液が心臓に戻りにくくなります。この結果、血液中の水分が血管外に漏れ出し、むくみが生じます。心不全のむくみは息切れや動悸を伴うことが多く、胸部レントゲン検査や血液検査、心臓超音波検査などで診断が可能です。
腎不全・ネフローゼ症候群
腎臓は、老廃物や不要な水分を排出し、必要なタンパク質やミネラルを体内に維持するなど、水分や体液のバランスを調整する大事な役割を担っています。この腎臓の機能が低下した状態が腎不全です。不要な水分が排出されず体内に溜まる他、必要なタンパク質が不足することもあり、これがむくみを引き起こす原因となります。ネフローゼ症候群も体内に必要なたんぱく質を維持することができず、浮腫が生じます。
肝機能障害、肝硬変
タンパク質の合成や分解、有害物質の分解など、肝臓にはさまざまな機能があります。肝機能障害によりこれらの機能が低下するとむくみが起こります。特に肝臓で合成されるアルブミンが不足すると低アルブミン血症となり、血管外に水分が漏れ出してむくみが起こります。
甲状腺機能低下、橋本病
甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンが不足すると、体の活動性が著しく低下し、体の随所がむくみます。急激に太りやすくなる、冷えや便秘、疲れやすさ、倦怠感などが生じやすく、うつ病や更年期障害と間違われやすい病気です。
血液検査での診断が可能で、適切な治療で症状も改善しますので、早めに当院を受診してください。
塩分摂取過剰による高血圧・慢性腎臓病・心不全
塩分は体内で水分をため込む作用があり、浮腫の原因の一つになります。日本人の平均食塩摂取量は9.8g/日(令和5年)ですが、世界的に見てもかなり多いのが実情です。高血圧や慢性腎臓病、心不全の患者さんは1日6g未満が目標となっています。塩分過剰摂取によるむくみが生じている方は高血圧・腎臓病・心不全なども発症している可能性もありますので、ぜひ当院まで一度診察に来ていただければ幸いです。

厚生労働省令和6年国民健康・栄養調査結果の概要より引用
急性肺動脈塞栓症
(エコノミークラス症候群)
長時間同じ姿勢でいると血流が悪化し、足に血栓という血の固まり(深部静脈血栓症、DVT)が生じて足がむくむことがあります。この血栓が肺に運ばれると肺血栓塞栓症を引き起こし、呼吸苦や息切れなどの症状が現れ、命に関わる場合もあります。飛行機内で発生することがありエコノミークラス症候群と呼ばれます。近年では東日本大震災などの大地震後に自動車内で不自然な姿勢で寝泊まりした後に発症することで有名になりました。妊婦さんやがんで治療中の患者さんも起こりやすいことが知られています。血流の改善を心がけ、むくみがあれば早めに受診してください。
下肢静脈瘤
歩く機会の激減によりふくらはぎのポンプ機能が低下し、足の静脈に血液が溜まってむくみや静脈瘤が生じる病気です。症状としては、足の皮膚のすぐ下に血管の塊が浮き出て見られたり、蜘蛛の巣のような細く赤い血管が広がったりします。命の危険はありませんが、悪化すると足の皮膚が荒れて潰瘍を繰り返すようになります。当院では診察は可能ですが、治療は対応しておりませんのでご了承ください。
一時的に体がむくむ原因は?
長時間同じ姿勢で過ごすと、ふくらはぎの血液を心臓に戻す働きが低下し、血流が滞ることでむくみが生じます。また、筋肉が硬直して動きにくくなることも原因です。他に、塩分やアルコールの過剰摂取、生理によるホルモン変化、睡眠不足、運動不足、ストレスなども一過性のむくみを生じます。改善するには、塩分やお酒を控え、休息やストレッチで筋肉をほぐすことが効果的です。軽度であれば多くの場合、睡眠で翌朝には解消します。
むくみの診察・検査の流れ
問診で状態を確認し、心不全や腎不全、甲状腺疾患の検索のため血液検査・尿検査、胸部レントゲン検査、心電図検査をまず行います。血液検査では、甲状腺機能や腎機能、心不全の指標となるNT-proBNP、血栓形成の目安となるD-ダイマーも確認します。必要に応じて心臓超音波・腹部超音波検査、甲状腺超音波などを行い、原因となる病気の診断確定を行ったうえで治療の相談を行います。緊急に治療が必要と判断した場合やさらなる精査が必要と判断した場合には提携病院へご紹介する可能性もあります。原因となる病気がない場合、尿検査で1日当たりの推定塩分摂取量を確認し、適切な指導や薬剤導入を行ってむくみの改善を図ります。