息切れ・横になると
息苦しい(息切れ)とは
横になっている時に息切れや息苦しさを感じるのは、体が酸素不足を補うために呼吸を荒くする生理的な反応です。息苦しさや呼吸困難も同様です。しかし、これらの呼吸器症状は多くの心臓病でも起こるため、中には重い病気によるものもあるので注意が必要です。
坂道や階段で息切れがする、平地を普通に歩いているのに息切れがする、呼吸がすぐに荒くなる、呼吸が浅くて速い、深呼吸をしないと息苦しいなどの症状がある場合は、早めに当院へ相談してください。
横になると息苦しい(息切れ)の原因
心不全
心不全とは、心臓の血液を全身に送り出す機能が低下する病気です。横になると息切れを感じる場合は、心不全の可能性があるので注意してください。
心不全が進行すると、腎臓への血流が悪くなり、水分をうまく排泄できなくなります。その結果、全身がむくみ、肺の周りに水が溜まってきます。肺に水が溜まってくると、呼吸をしても酸素を十分に吸収できなくなり、息切れを感じることがあります。また、息切れがひどくて眠れないこともあります。
心不全の症状
気管支喘息
気管支喘息の方は、自律神経の影響で寝る時に息苦しさの症状が現れることがあります。特に明け方に多いのが特徴です。
気管支喘息で息苦しくなるのは、気管支の慢性的な炎症により気管支が腫れて、空気の通り道が狭くなるためです。空気の通り道が狭くなると、ゼーゼー、ヒューヒューという喘鳴を伴う呼吸困難が起こります。
息苦しさは、主に次のようなタイミングで現れることがあります。
息苦しくなるタイミング
- 夜から早朝にかけて
- 季節の変わり目の時期
- 疲れが溜まっている時
- 天候不良の時
- 風邪をひいている時
- タバコやお香の煙、強いにおいに晒されたとき
慢性閉塞性肺疾患
慢性閉塞性肺疾患は、長年の喫煙習慣により、肺が慢性的に炎症を起こす病気です。
頻繁な咳と体を動かした時の呼吸困難が主な症状で、徐々に悪化していきます。
横になると痰が原因で呼吸困難になることもあります。
その他の症状としては、以下のような症状が考えられます。
慢性閉塞性肺疾患の症状
- 1日に数回咳き込む
- 「ゼーゼー」や「ヒューヒュー」といった喘鳴
- ビール樽のように胸が膨らむ
- 皮膚が紫色から黒っぽくなり、チアノーゼになる
- 指がドラムスティックのようにむくむ
- 体重の減少
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群とは、一晩の睡眠中に何度も無呼吸状態が起こることで睡眠の質が低下する病気です。
原因はさまざまですが、睡眠中に舌がのどに落ち込み、気道が狭くなることも一因と考えられています。気道が狭くなると、酸素を取り入れにくくなり、呼吸が止まり、息苦しさを引き起こします。また、睡眠中の酸素不足は睡眠の質を低下させ、日中に極度の眠気を生じやすくします。
睡眠時無呼吸症候群の症状
副鼻腔炎
副鼻腔炎は、風邪のウイルス、細菌、アレルギーなどが原因で、副鼻腔の粘膜が炎症を起こす病気です。
粘り気のある濃い鼻水が特徴で、これがのどに流れ落ちると炎症が起こり、咳や呼吸困難が増すことがあります。
また、以下のような症状が現れることもあります。
副鼻腔炎の症状
- 鼻づまり
- 鼻水
- 頭痛
- 嗅覚障害
- 咳
- のどに鼻水が落ちる
- 顔面痛
- 倦怠感
- 発熱
- 口臭
自律神経失調症
自律神経失調症とは、交感神経と副交感神経のバランスが崩れた状態を指します。自律神経失調症になると、呼吸が浅くなったり、早くなったりして、息切れを感じることがあります。呼吸に異常を感じたら、意識的に深呼吸をしてみましょう。
自律神経のバランスが崩れると、体の働きを適切に調整する機能が低下し、次に挙げるようなさまざまな症状が現れることがあります。
自律神経失調症の症状
- 耳鳴り
- めまい
- 食欲不振
- 便秘や下痢
- 腹痛
- 動悸
※当院では対応できませんので心療内科や精神科などへの受診をお勧めします。
パニック障害
体に異常がないにもかかわらず、動悸や呼吸困難、めまいなどの発作を繰り返す心の病気がパニック障害です。パニック障害の発作が起こると、強い不安や恐怖を感じるのも特徴です。
原因はまだ完全には解明されていませんが、日頃ストレスをためている方に多い傾向があるようです。
主な症状は以下の通りです。
パニック障害の症状
- めまい
- 頭がくらくらする
- 物事に対して現実感がない
- 発作を繰り返す
- 発作が起こることが不安になる、予期不安に陥る
- 鬱病や不安障害を誘引することがある
※当院では対応できませんので心療内科や精神科などへの受診をお勧めします。
横になると息苦しい(息切れ)の検査
横になった時に息切れを感じる場合は、心臓や呼吸器の病気である可能性があるので、すぐに当院を受診してください。
問診や血液検査の他、必要に応じて心電図検査、胸部レントゲン検査、心臓超音波検査、パルスオキシメーターで血中の酸素濃度を測定します。
これらの検査の結果によっては、CT検査、血管造影、換気血流シンチグラフィーなどの追加検査が必要になる場合があり、その場合は当院と連携している高度医療機関にて対応します。
横になると息苦しい(息切れ)の治療(循環器疾患)
主に心不全、心臓弁膜症、狭心症、心筋梗塞、不整脈などの心臓疾患や心臓の状態によって、息切れが起こっていると考えられます。治療は原因となる病気によって異なりますが、基本的には生活習慣の見直し、運動療法、薬物療法、心臓カテーテル治療、カテーテルアブレーション、ペースメーカー治療などがあります。なお、息切れの原因として最も多いのは心不全とされています。
心不全の治療
「心不全」という病名はなく、心臓の機能が低下し、体内に十分な酸素を供給できなくなった状態を心不全と呼びます。心不全は、さまざまな心血管疾患によって引き起こされる可能性があります。心不全になると、体内に余分な水分が溜まります。水分が肺に溜まると息切れの原因となります。そのため、心不全で息切れが起こっている場合には、体内の水分量を減らすために、利尿剤としてむくみを改善する薬や心臓の働きを助ける薬を用いて治療していきます。
生活習慣改善
体重や血圧測定を定期的に行いましょう。心不全で治療中の方で体重が急激に増加する場合には心不全の悪化が考えられますので主治医に相談しましょう。水分の摂りすぎに注意しましょう。健康のためには水分をたくさん摂ることが一般的に推奨されますが、心臓病の場合は逆効果になることがあります。
薬物療法
患者さんの病状に応じて、心臓の保護、脈拍の安定、利尿剤など、用途にあわせて処方されます。
運動療法(心臓リハビリテーション)
軽い運動を定期的に続けることで、心拍数を安定させ、自律神経のバランスを整えることができます。心不全では心臓の機能が弱っているため、ご自身の状態に合った運動を行うことが大切です。担当医と相談しながら、最適な運動を毎日続けるようにしましょう。無理をすると逆効果になり危険ですので、注意が必要です。