これは動悸でしょうか?
動悸を感じる場合
動悸は、誰もが経験したことのある日常的な症状です。例えば、心臓の鼓動が耳に聞こえる、強い動悸を感じる、脈が飛ぶ、胸が締め付けられる、息切れがする、心臓が早く鼓動するなどがあります。しかし、安静にしていても急に動悸や不整脈を感じると、心臓に異常があるのではないかと不安になる方も多いでしょう。動悸の多くは心配のないもので、緊張やストレス、過労などが原因となっているものですが、中には不整脈や心不全、狭心症などの循環器疾患が疑われる場合もあり、専門的な治療が必要となります。甲状腺などのホルモンが原因となっていることもあります。脈が乱れる、動悸とともに息切れやめまいがする、体重が増えたりむくんだりするといった症状がある場合は、早めに当院へご相談ください。
動悸の種類と原因
動悸の症状は主に、脈が飛ぶような感じ、強い動悸を感じる、心拍が速くなる(遅くなる)、という3つに大別されます。
心拍が一瞬乱れる、
脈が飛ぶ
脈が1回分飛んだ感じなど、不快な動悸の感じ方ですが、多くは期外収縮と呼ばれる良性の不規則な心拍によるもので、健康な方にも起こります。頻繁に起きたり、めまいや息切れなどの症状も伴うようであれば、治療を要する循環器疾患も隠れている可能性もありますので、ご心配な方は当院までご相談ください。
動悸が聞こえる、
鼓動を強く感じる
患者さんにとっては不安な動悸ですが、自律神経が不安定になる緊張やストレスなどによって起こりやすい症状です。カフェインの過剰摂取や睡眠不足などによっても起こりがちです。
鼓動が強く、
脈拍が速くなる、遅くなる
このタイプの動悸には、治療が必要な病気が隠れていることが比較的多いと考えられます。心臓病などの循環器疾患以外にも、動悸の原因となる病気は多数ありますので、問診で詳しく症状を伺い、鑑別診断を行います。動悸以外の症状がある場合は、緊急の治療が必要な場合が多いので注意してください。
動悸の原因となる主な病気
循環器疾患
不整脈や心不全が原因と考えられます。
不整脈
不整脈の主な原因で、脈が速くなる動悸の原因となるものとしては、主に心房細動と発作性上室性頻拍が挙げられます。
心房細動は、心臓の一部である心房が不規則に早く動くことで動悸を引き起こします。加齢、高血圧、糖尿病、ストレス・過労、飲酒、運動不足、睡眠不足(睡眠時無呼吸症候群)などの要因によって引き起こされます。治療せずに放置すると、脳卒中(心原性脳塞栓症)や心筋梗塞、心不全に繋がる可能性もあるため、早期に治療することが必要です。
発作性上室性頻拍症は、通常1分間に60~90回程度である心拍数が、突然1分間に150回前後まで増加する病気です。心拍数が急激に増加すると、血圧が低下してめまい・失神、脱力、倦怠感などが起こります。上記のような症状が出現、発作が長時間続くなどの場合は早めに受診しましょう。
心不全
心臓の機能が低下し、必要な量の酸素を運べなくなる状態を心不全と呼びます。酸素不足を補うために心拍数が増加し、送り出される血液量が増えるため、動悸が起こります。
心不全になると、足のむくみや疲れやすさ、食欲低下などの症状が現れ、進行すると息切れが起こることもあります。心不全の原因となる心臓病はたくさんあり、その多くは重症化する可能性があるため、専門医による循環器の検査を受けて原因を特定し、適切な治療を受けることが大切です。
循環器疾患以外の原因
動悸は、甲状腺機能亢進症、貧血、低血糖(糖尿病)、脱水、呼吸器疾患などでも起こります。
甲状腺機能亢進症
甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで起こります。女性に多く、動悸の他、手の震え、体重減少、多汗、疲れやすさなどの症状が現れます。甲状腺はのど仏周辺にあり、甲状腺機能亢進症の場合は、首に触ると甲状腺が腫れていることが分かります。甲状腺機能亢進症は心臓に負担がかかる病気なので、不整脈も起こりやすいため、不整脈が疑われた場合には血液検査で甲状腺の病気の有無を調べます。甲状腺機能亢進症は動悸だけではなく、体重減少、汗をかきやすいといった複数の症状を引き起こしますが、適切な治療で改善する病気です。疑わしい症状がある場合には早めに当院へご相談ください。
貧血
貧血になると血液が運ぶ酸素の量が減るため、その不足を補おうとして心拍数が増加し、動悸が生じやすくなります。特に運動時など体に負担がかかっている時に動悸を感じやすくなります。当院では血液検査で貧血をチェックするとともに、貧血の原因となる疾患を必要に応じて追加で検査させていただきます。
低血糖
糖尿病の治療の一環として血糖値を下げる薬を服用している場合や、インスリン注射により血糖値が低くなりすぎた場合、心拍数は低血糖を補おうとして増加します。動悸の他、冷や汗やめまいなどの症状も引き起こす低血糖は、非常に危険です。低血糖の症状が起こりそうな場合は、すぐにブドウ糖を摂取するなどして低血糖発作を防ぐ必要があります。糖尿病治療中の患者さんは、処方された薬の内容や服薬と食事のタイミングなどについて主治医とよく話し合い、低血糖発作が起きた場合の対処法をきちんと把握しておきましょう。
動悸の症状で
受診すべき場合とは
頻脈(心拍数が異常に多い状態)や徐脈(心拍数が異常に少ない状態)が見られる場合は、早めに当院にご相談ください。適切な治療により、将来の致命的な発作を防げる可能性があります。また、脈が不規則で不安定な場合、心配ないこともありますが、頻繁な場合は早めに循環器内科を受診し、必要な検査や治療を受けることが重要です。
動悸の主な検査
心電図検査
不整脈の有無を調べる検査です。ただし、短時間の心電図検査では不整脈の有無を判断できない場合が多いため、ホルター心電図(24時間心電図)検査を行うこともあります。
血液検査
血液検査は心臓血管系の病気の診断に役立つだけでなく、甲状腺疾患、貧血、血糖値といった、その他の幅広い病気のチェックにも有効です。
胸部レントゲン検査
心臓肥大や胸水貯留などの有無を調べることができます。危険の少ない不整脈であっても、症状や心不全があれば治療が必要になりますので、治療の要否を判断するために検査を行う必要があります。
心臓超音波検査
不整脈の起こる背景疾患として心筋症(肥大型心筋症や拡張型心筋症、アミロイドーシスなど)をお持ちの方もいます。心筋症や心不全の評価のためには心臓超音波(心エコー)検査で詳しく心臓を調べることが必要です。