胸痛

注意すべき胸痛(胸の痛み)

注意すべき胸痛(胸の痛み)胸痛を引き起こす臓器は、心臓、肺、胸膜、骨、神経、筋肉、気管支、血管、消化器など多岐にわたります。最も多いのは心臓や肺の病気で、緊急の対応が必要な危険な病気の症状として胸痛が起こっている場合もあります。特に緊急を要する状態としては、緊張性気胸、急性冠症候群、大動脈解離、肺血栓塞栓症、食道破裂などがあります。急性冠症候群とは、冠動脈が急激に詰まることで起こる急性心筋梗塞などの状態を指します。
突然、焼けるような感覚、強い痛み、鋭い痛み、または胸全体に広がる痛みや持続する痛みを感じたら要注意です。

痛みの原因を知るために
知っておくべき重要な
ポイント

胸痛が起こった際には、以下の点をできるだけメモしていただき、受診時に医師にお伝えください。

痛みの表現

鈍い痛み、圧迫感を伴う痛み、刺すような痛み、締め付けられるような痛み

痛みの場所

左胸、前胸、背中や首、肩など、胸から離れた場所など

痛みが持続する時間

瞬間的、数分間、20分以上、数時間以上

痛みが発生する状況

食事中、体勢を変えた時、深呼吸や咳などで増悪、体の向きで変化、安静時、朝が多い

胸痛に伴う症状

吐き気、嘔吐、呼吸困難、発熱、冷や汗、背中の痛み


胸痛に伴う主な病気と特徴

心臓や血管の病気

狭心症

  • 階段を上る、荷物を持って歩くなど、体に負担がかかった際に、前胸部が締め付けられるような痛み、左肩~左手のしびれ、あごの~喉の痛みなどの症状が起こる
  • 症状は休むと数分で痛みが消える
  • 首や肩などへ広がる痛み(放散痛)や、上腹部の痛みなどを伴うことがある
  • 冠攣縮性狭心症の場合には安静時の胸痛が出ることがある。明け方~朝にかけての胸痛であることが多い。

急性心筋梗塞

  • 突然の激しい胸痛
  • 痛みが30分~数時間持続する
  • 呼吸困難、吐き気、冷や汗、血圧の低下、顔色の悪さなどを伴うことがある
  • 糖尿病の患者さんでは症状が軽い~ほとんど感じない方もいます

大動脈解離

  • 突然の激しい胸痛(耐え難い、引き裂かれるような痛み)
  • 多くは背部痛や腹痛も伴う
  • 背中や腰の痛み、痙攣、足の痛み、腹痛、失神、意識喪失を伴う場合がある

肺や胸膜の病気

気胸

  • 突然の胸痛と呼吸困難
  • 深呼吸により痛みが悪化し、持続する
  • 若い痩せた男性に最も多く見られ(放散痛)、上腹部の痛みを引き起こす可能性がある

肺炎+胸膜炎

  • 炎症が肺を取り囲む胸膜に広がると、激しい胸痛が引き起こされる
  • 体力が低下している方、免疫力が弱い方、ご高齢者では二次感染としてよく見られる

急性肺血栓塞栓症
(エコノミークラス症候群)

  • 突然の呼吸困難、胸痛、咳、痰に血が混ざる、低血圧によるショック状態
  • 長時間同じ姿勢で座っていると、足や骨盤の静脈に血栓(血の塊)ができ、それが血流に流されて肺の血管を詰まらせ、突然死に繋がる可能性がある
  • 長時間座った後に足が腫れる場合は要注意

消化器疾患

逆流性食道炎

  • 胸や胸骨付近の焼けるような痛み
  • 嚥下困難、咳、胸やけなどを伴うことがあり、横になると咳が続く

食道破裂

  • 突然の激しい吐き気と胸痛または腹痛
  • その後、発熱、倦怠感、低血圧なども出現することがある

そのほかの病気

肋間神経痛

  • 肋骨の神経に沿った痛み、片側だけで発症する
  • ストレスや不自然な姿勢を長時間続けて起こることが多い
  • 帯状疱疹などのウイルスが関与していることもある

帯状疱疹

  • 肋骨の神経に沿った痛み、通常片側だけで発症する
  • 過労、ストレスや基礎疾患(がんや糖尿病など)をお持ちの方に多い
  • ピリピリした痛みとともに水泡などの皮疹が出現する

心臓神経症・胸痛症候群

  • ストレスで誘発されたり、短時間で改善する動悸、胸痛など
  • 検査では異常が見つからず、比較的若い女性に多い

心臓が痛い(胸痛)は
ストレス?

心臓が痛い(胸痛)はストレス?ストレスによる心臓の不調には、自律神経の働きが必ず関わっています。自律神経は体温や代謝、心臓を含む臓器の働きを調整し、交感神経と副交感神経が均衡を保ちながら全身の機能を司っていますが、ストレスなどでその均衡が乱れることがあります。例えば、ストレスが続くと交感神経が過剰に働き、心拍数や脈拍が高い状態が続きます。本来は副交感神経が働いて正常に戻るべきですが、交感神経が優位なままだと心臓に負担がかかり、不調や痛みに繋がります。


胸痛に併発するその他の症状

胸痛とともに何らかの症状を併発する場合、医師に症状を伝えることで、より正確な診断をより早く受けることができ、適切な治療を迅速に受けるチャンスが広がります。
以下の症状がある場合は、診察時に医師にお伝えください。

左肩~左腕のしびれ

左肩~左腕の感覚麻痺(しびれ)が胸痛と同時に起こる場合は、狭心症や心筋梗塞の可能性があります。早めに循環器内科を受診してください。人によって胸痛は伴わないこともあります。狭心症や心筋梗塞では胸痛以外にもさまざまな症状が現れますが、特に左腕のしびれはよく見られる症状です。

肩の痛み(特に左肩)

胸痛とともに肩の痛みがある場合も狭心症や心筋梗塞を疑う必要があります。肩の他、首や背中、あごなど、体のさまざまな部分に痛みを感じることもあります。また、心臓に問題がない心臓神経症の場合にも、これらの症状が現れることがあります。この場合も、緊急を要する病気の有無を迅速に確認する必要があるため、できるだけ早く循環器内科を受診してください。

奥歯の痛み(特に左側)、
歯が浮く感じ

狭心症や心筋梗塞では、その痛みが周囲に放散することがあり、時に歯痛を起こすことがあります。狭心症で歯痛だけ起こることはまれですが、狭心症や心筋梗塞の危険性があり、軽い胸痛を伴う歯痛が起こった場合は、まず循環器内科を受診することをお勧めします。

胃やみぞおちの不快感

心筋梗塞の場合、胃やみぞおちに不快感があり、消化器症状と間違われることがあります。また、食事とは関係なく消化器症状が悪化する場合には、心筋梗塞の可能性もあります。心筋梗塞の場合、胸痛がなくてもみぞおちの不快感を起こす場合があるので、十分な鑑別と適切な治療を受ける必要があります。一般的に心臓の病気は消化器の病気よりも緊急性が高いので、まずは循環器内科を受診して問題がないか確認することが必要です。

息苦しさ・呼吸困難

胸痛とともに息苦しさが生じたり、呼吸困難になったりする場合は、徐々に症状が悪化していく狭心症、心筋梗塞に加えて心不全を併発していたり、気胸、胸膜炎、肺血栓塞栓症などの緊急性の高い病気も疑われます。なるべくお早めに当院まで受診するようにしてください。

激しい咳

心不全、胸膜炎、肺血栓塞栓症などの重い病気では、胸痛が起こり、咳が止まらなくなることがあります。緊急を要する病気ですので、すぐに病院を受診してください。画像検査で異常がなければ、胸痛や咳は骨や筋肉、神経の異常によって起こっている可能性があります。また、骨がもろくなる骨粗鬆症では、咳を繰り返すことで肋骨が折れたりヒビが入ったりすることがあります。

くしゃみ

くしゃみをすると胸痛が悪化する場合は、肋骨の骨折や、ヒビが入っている可能性があります。また、不自然な動きによって肋間神経が筋肉に挟まれ、痛みを引き起こす肋間神経痛の可能性もあります。肋間神経痛のほとんどの症例では、薬物療法で治療でき、数週間で改善します。