気管支喘息とは
気管支喘息は、アレルギーを含むさまざまな要因によって気道(空気の通り道)の炎症が長く続く病気です。皮膚に例えると、擦り傷や肌荒れが長く続いている状態です。炎症を起こした気道は敏感になり、少しの刺激でも咳が出たり、急激に気道が狭くなることで発作的に強い息苦しさを感じたりします。これが喘息発作です。
かつては喘息発作で亡くなる方も多かったのですが、吸入ステロイド薬が開発されて以来、適切な治療を受ければ、ほとんどの方が普通の生活を送れるようになりました。
気管支喘息の3つの特徴
気管支喘息は、気道に炎症があり(気道の慢性炎症)、それによって健康な方に比べて気道があらゆる刺激に敏感になっている(気道過敏性)、そのため気道が狭くなっている(気道狭窄・気流制限)という3つの特徴を持つ病気です。
気管支喘息の原因
気管支喘息は実に多様な原因によって引き起こされる病気です。個体因子と環境因子の複雑な相互作用の結果として発症します。アトピー素因とは、アレルゲン(アレルギーの原因となる物質)に反応してIgE抗体を産生しやすい要素のことを言います。
性別で見ると、小児喘息は男の子に、成人喘息は女性に多いと言われています。
環境因子としては、気管支喘息の発症に関わる最も重要なアレルゲンはハウスダストやダニであり、その他にもカビ、花粉、ゴキブリなどの昆虫、ペットなどが挙げられます。近年、喫煙やPM2.5などの大気汚染物質も環境因子として注目されています。
大人の気管支喘息の原因
成人の喘息は、アレルゲン、職業的要因、感染症、喫煙、大気汚染、ストレス、肥満などによって引き起こされることがあります。成人の気管支喘息の原因はさまざまです。アレルゲン(花粉、ダニ、カビ、ペットの毛など)に晒されることが主な原因のひとつと考えられています。また、職業上の環境要因(化学物質、粉塵、煙など)も喘息を発症するリスクを高めます。
気管支喘息の症状
気管支喘息の主な症状は、繰り返す咳、発作性呼吸困難、胸部圧迫感、喘鳴(呼吸する際の「ヒューヒュー」または「ゼーゼー」という音)、痰などです。症状は夜間や早朝に多く見られます。また、季節の影響を受けやすく、朝と夕方の気温差が大きい季節に発症することが多いとされています。発作がない時には症状は消えますが、重症の喘息では常に症状が現れることもあります。
また、次のような症状も見られます。
- 喘鳴(ゼーゼー、笛を吹くような音)
- 息苦しさ
- 咳
- 痰
- 胸やのどの違和感
症状が強くなる要因
- 夜間(就寝時~早朝にかけて)
- 寒暖差が大きい時、季節の変わり目
- 天候不良の時
- 疲労時
- 風邪症状がある時
- 刺激物(タバコの煙、線香の煙、強い臭いなど)に晒された時
気管支喘息の検査
気管支喘息には明確な基準がないため、1回の検査結果だけで簡単に診断できるものではありません。そのため、診断の際には、次のような点も考慮し総合的に判断していきます。
気管支喘息に典型的な症状があるか。
また、その症状が悪くなったり良くなったりを繰り返しているか。
問診で確認します。
気管支拡張薬を使うと、症状が改善するか。
薬を実際に使用して、その後の経過を観察します。
ご本人、ご家族がアレルギー体質か
問診で状況を詳しく伺い、採血をして確認します。
気道に炎症が起きているか。
呼吸機能検査(当院ではできませんので必要に応じて他院にお願いします)で確認します。
喘息に似た症状を起こす、他の病気が隠れていないか。
血液検査、胸部レントゲン検査などの検査で確認します。
必要に応じて胸部CT検査を追加でほかの医療機関でお願いすることもあります。
豊富な臨床経験と複数の診断機器、このどちらが欠けても正確な診断は不可能です。
胸部レントゲン検査のAI読影システムを導入しております。
胸部レントゲン写真の異常陰影検出精度の向上を目的として、当院ではAI読影支援システムを導入しました。最新のAI技術と医師の経験や知識を組み合わせることで、より正確かつ迅速な診断を実現し、それぞれの患者さんにとって最善の医療の提供が可能になると当院は考えています。
気管支喘息の治療
普段の治療
日常的な治療の中心となるのは吸入ステロイド薬です。エアロゾルや粉末の状態で容器に入っており、口から吸入するタイプの薬です。薬は気道の粘膜に付着し、喘息患者さんに起こっている気道の炎症を効果的に抑えます。
また、吸入薬が体内に吸収されることはほとんどないため、副作用が非常に少ないのも利点です。そのため、妊娠中の方にもお使いいただけます。
症状が落ち着いていても、喘息患者さんの気道粘膜では炎症が続いています。そのため、自己判断で薬を中止すると、気道のリモデリングが進行してしまいます。症状が落ち着いていても、吸入ステロイド薬は継続して使用してください。
重症度に応じて、以下の薬も併用していきます。
- テオフィリン製剤(内服)
- 抗ロイコトリエン受容体拮抗薬(内服)
- 長時間作用型β2刺激薬(吸入)
- 長時間作用型抗コリン薬(吸入)
吸入ステロイドの副作用として、声がかすれることがあります。これは、吸入した際に薬が口の中に付着することが原因です。そのため、以下の点に注意してください。
- 吸入後は、口の中を十分にゆすぎましょう
- できれば吸入後は水を飲みましょう
- 食事の前に吸入を行いましょう(吸入後に食事をすると、唾液や食べ物を飲み込む際に、口の中に付着した薬が流れ落ちやすくなります)
- 声がれやのどの痛みがひどいときには吸入の種類を変更することもできますので医師までご相談ください
喘息発作時の治療
発作の程度に応じて、即効性のある気管支拡張剤(短時間作用性β2刺激薬)の吸入や、経口・静注ステロイド薬が使用されます。
これらはすべて、発作を抑えるために一時的に使用します。
気管支喘息発作を和らげる方法
軽度~中程度の発作の場合は、薬を使用しながら、安静にして経過を見守りますが、感染症など誘因となっていることもあるため、発熱や痰などの症状があるようでしたら当院までご相談ください。気管支拡張剤を吸入してから30分以内に症状が改善する場合は、そのまま吸入を継続します。20分ごとに3回吸入しても症状が改善しない、または悪化する場合は、早急にご相談ください。