下肢閉塞性動脈硬化症

下肢閉塞性動脈硬化症

このような
足の症状はありませんか?

  • 片足がしびれたり、つま先が冷たくなったりする
  • 長距離歩くと片足が痛む
  • 片足の皮膚が青白くなったり、紫色になったりする
  • じっとしているのに足が痛む
  • 夜になると足が痛くなり、眠れない
  • 足先の傷の治りが悪くなった

これらの症状に思い当たる方は、下肢閉塞性動脈硬化症の可能性がありますので、当院を受診してください。
ここでは下肢閉塞性動脈硬化症について詳しくご説明します。


下肢閉塞性動脈硬化症とは

下肢閉塞性動脈硬化症とは動脈硬化により足の動脈が狭くなったり(狭窄)、詰まったり(閉塞)する病気です。足への血流が減ることで、足に十分な栄養や酸素が行き渡らなくなり、さまざまな病気に繋がる可能性があります。

動脈硬化とは

動脈硬化とは、血管の内側にコレステロールが沈着し、血管の内部が狭くなり血液の流れが悪くなった状態をいいます。
動脈硬化はそもそも血管の老化現象のことであり、誰でも年齢を重ねれば血管はもろくなっていきますが、糖尿病や高血圧、高脂血症などの生活習慣病がある場合、動脈硬化が通常より早く進行してしまいます。
その結果、おもに足の先などに十分な血液が届かなくなることでさまざまな酸素不足や栄養不足の症状が出現するようになります。


下肢閉塞性動脈硬化症の原因

下肢閉塞性動脈硬化症の原因下肢動脈の動脈硬化が原因として考えられます。動脈硬化とは、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病や喫煙や加齢が原因で起こります。血管の内壁が傷つき、そこにコレステロールなどが溜まってアテロームと呼ばれる粥状の瘤(粥腫)ができると血管が狭くなります。このアテロームが破れて血栓ができると、急に血流が低下して血管が詰まることがあります。そのため、糖尿病、脂質異常症、高血圧、喫煙、高尿酸血症、慢性腎臓病、肥満などの生活習慣病を合併している方に下肢閉塞性動脈硬化症が起こりやすいと言えます。また、全身の動脈硬化が進行するため、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などを合併しやすい病気でもあります。


下肢閉塞性動脈硬化症の症状

症状は大きく4つの段階(Fontain分類)に分けられます。

1度:
無症状~冷感・しびれ感

特に歩いたときに下肢に痛み、しびれ感、冷たいと感じる時があり、指の色が青白くなることもあります(下肢の色調不良)。

2度:間欠性跛行(はこう)

ある程度歩くとふくらはぎなどが締め付けられるように痛み、休憩しなければならない状態になります。歩ける距離が短いほど病気が進行していることになります。

3度:安静時疼痛

何もしていなくても足が痛んだり、刺すような痛みで夜も眠れなかったりします。

4度:潰瘍・壊死

なかなか治らない潰瘍ができたり、皮膚が黒く壊死したりすることがあります。

3度~4度で重症となり、半年で40%の患者さんが下肢切断に至ると言われています。


下肢閉塞性動脈硬化症の検査

下肢の動脈硬化の検査では、まず問診と触診を行います。
触診では、足の付け根、膝の裏、足首の内側、足の甲の4ヶ所の動脈を触って脈拍を調べます。脈が弱かったり、脈を感じなかったりする場合は、足の動脈が詰まっている可能性があります。
また、腕と足首の血圧を測定し、その差を比較することで、血管が詰まり始めているかどうかを判断することができます。足首の血圧が腕よりも低い場合は、この病気の疑いがあります。診断がついたら、次に治療のための検査を行います。

ABI検査
(足関節上腕血圧比)

ABI/CAVI両腕と両足の血圧を同時に測定し、比率を算出します。通常は腕よりも足の血圧が高いため、1.0以上であれば正常と判断されます。しかし、足の血流に異常があると1.0未満となり、0.9以下であれば下肢閉塞性動脈硬化症の可能性が高いと言えます。
5分程度の血圧を測定するだけの検査であり、当院でもすぐに検査することが可能です。

下肢動脈超音波(エコー)検査

ゼリーを塗ったプローブを体の表面にあてて観察します。とくに鼠径部より下の血管が観察しやすく、この検査に適しているとされています。

造影CT検査

点滴から造影剤を注入し、下肢動脈が造影された状態でCT撮影をします。大動脈から足首までの動脈を詳細に観察することができます。
造影剤を使用するため、腎機能の悪い方には適しません。
必要となった場合は、当院がご紹介する連携医療機関にて対応します。

下肢MRA検査

造影剤を使用できない患者さんに対して行われる検査です。造影CTに比べると解像度は落ちますが、造影剤を使用せずに検査できるメリットがあります。
必要となった場合は、当院がご紹介する連携医療機関にて対応します。

下肢動脈カテーテル検査

カテーテル(細い管状の医療器具)を足の付け根や手の動脈から挿入し、血管を撮影しやすくする造影剤を注入して、「下肢動脈の走行や詰まりを調べる」検査です。 カテーテル検査では、詰まりの場所や程度が把握できることが多く、治療方針を決めるのにも役立ちます。病院によってはそのままカテーテル治療まで行う施設もあります。
このような検査や治療が必要となった場合は、当院がご紹介する連携医療機関にて対応します。

下肢閉塞性動脈硬化症の患者さんは動脈硬化が進行していることが多いため、当院では虚血性心疾患のスクリーニングも同時にお勧めしています。
以下の検査を用いてスクリーニングを行います。


下肢閉塞性動脈硬化症の治療

運動療法

この病気で一番大切なのは歩くことです。これは間欠性跛行(歩行によりふくらはぎなどの筋肉が痛くなり歩行が続けられなくなる病気)の患者さんには特に効果的です。運動療法には大きく分けて「病院で行う指導付き運動療法」と「自宅で行う自主運動療法」があります。運動療法は、少なくとも週3回、できれば1日2回、1回につき30分程度を目標に行うことが望ましいとされています。

下肢閉塞性動脈硬化症の足は温めるべき?

下肢閉塞性動脈硬化症と診断された方は、足が冷えると血流がさらに悪くなり、病気が悪化する可能性があるので、足が冷えないようにすることが大切です。足湯などで足を温める他、爪を清潔に保つよう心がけましょう。

運動療法の注意点

下肢閉塞性動脈硬化症の患者さんの約半数は、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)も患っています。最初は胸の症状がなくても、運動療法を続けることで治療効果が得られ、運動量が増えると狭心症発作を発症することがあります。そのため、運動療法を始める前に医師の診察を受け、その後も定期的に受診することが推奨されます。

虚血性心疾患

薬物療法

血液をサラサラにする「抗血小板薬」や、「末梢血管拡張薬」などの内服により、症状の改善が見込める場合があります。お持ちの病気によっては内服できない場合もあります。

カテーテル治療(PTA/EVT)

下肢の動脈にカテーテルを挿入し、バルーン(風船)で閉塞している部分を広げたり、血管の拡張状態を維持する効果のある「ステント」(網目状の筒)を挿入したりして、閉塞部位を治療します。医師が必要と判断した場合は、当院がご紹介する連携医療機関にてカテーテル治療を行います。

バイパス手術

血管が狭くなったり詰まったりしている部分に、ご自身の血管(足の静脈)や人工血管を繋ぎ合わせる手術です。医師が必要と判断した場合は、当院がご紹介する連携医療機関(血管外科)にてバイパス手術を行います。